前世療法ってこんな感じ / わたしは魔女狩りに遭っていた
こんにちは。
Fumiko です。
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この記事は、「前世療法ってこんな感じ /17世紀、わたしはベルギーの修道士だった」の続きです。
主人公ピエールは、どうなったかな。
怖がらずに読んでくださいね。😊
目次
「そのあと、どうなったかな。三つ数えたら先へ進むよ。1、2、3。はい、どうなった」
「ええっ!わたしは磔になる」
「うん、どうして」
「キリストみたいに」
「何か悪いことしたの」
「ううん」
「そうじゃないんだ。人を救っている行為が誤解されたの」
「そう、誤解・・・」
この先どうなるかと訊かれ、何のイメージも湧いてこないのに、突然「磔」という言葉が暗闇の中にぽっかりと浮かんだ。
まさかと強く否定したい気持ちにもかかわらず、その言葉は闇の中でにわかに鋭い光を放ちはじめる。
そして、それはたしかにあったことなのだという確信へと変わっていった。
当時の教会と修道院には、人々が免罪を求めて寄付するために富が集まり、それが腐敗の原因にもなっていた。
しかし同時に、貧しい人々に学問と医療を提供してくれる場所でもあった。
修道院には学識のある人々が僧として集まったので、貧しい者はそこで学問の機会を得ることができた。
また、修道院は祈りのほかに病院としての機能も持っていたから、修道僧の中には薬草の知識のある者もいたことだろう。
修道士だったピエールも、薬草についての知識と使い方を知っていたであろうと思われる。
ピエールは、ただ祝福を与え祈るだけではなく、薬草の知識をもって実際に人々を救っていたにちがいない。
貧しい食物と過酷な労働と不衛生に苦しんでいた人々は、薬草と簡単な医療の知識を持っている放浪の僧を歓迎し、乏しい食糧を分け与え粗末な宿を提供したことだろう。
だからこそ、ピエールは厳しい放浪の旅を生きぬくことができたのだ。
しかし、魔女狩りの時代においては、癒しや医療行為を行う者は妖術を使う者と見なされた。
ピエールにとっては、人を救う行為が逆に命取りとなったのだろうと推測される。
「今、どこにいる」
「磔になる」
「あなただけ」
「若い修道士も」
「一緒?」
「ああ、若い修道士が磔になる。ああ・・・ああ、彼を救いたい。わたしのために彼が死ぬ。彼を巻き込んでしまった。彼を救ってほしい。ああ、やめて!」
イメージは湧いてこないのに、わたしの心には感情の嵐が吹き荒れていた。
わたしは大声で泣き叫んでいた。
「ほら、肉体から脱け出てごらん。大丈夫、大丈夫。肉体からすーっと脱け出てごらん」
「もういいよ、もういいよ。ほら、魂がすーっと肉体から脱け出たよ。感じてごらん。魂が肉体から出たら、もう全然苦しくないよ」
「ああ、いいことして来たのに。救って来たのに・・・」
わたしは、すすり泣きながら嘆いていた。
「ピエール、もう死んじゃった?」
「うん」
「ピエール。今ほら、ピエールの魂になったね。今どうしてるの」
「上から見下ろしてる」
「今、自分の肉体見てるね。肉体にいたときは苦しかったね。でも今は苦しくないね。人生ひとつ終わったよ」
「ピエールに石を投げていたひとたちは戸惑っている。愚かな人たち。集団に流される人たち」
「でも、ピエールはそういう人たちの気持ちも分かってるよね」
「哀れな人たち」
魔女狩りの時代、処刑は公開だった。
この時代に生きる人々にとって、死は常に身近なものだった。
娯楽の少ない日常の中で、人々は公開処刑に興奮したことだろう。
しかし、公開処刑は、教会と支配する側にとっては民衆への「見せしめ」だった。
特に魔女狩りの時代においては、磔にされる側と、いつ自分も立場が入れ替わるか知れないのだった。
今、処刑される人間に石を投げ罵声を浴びせている人々の興奮の下には、不安と恐怖が激しく渦巻いていた。
意欲的で欲張りな魂は、いっぺんにやろうとする。
「ピエール、魂になったら自分の周りを見てごらん。ほら、そばに誰がいる」
「母、父」
「ほかに誰がいる。ほかの魂は、今一緒に死んだ若い修道士の魂もいるかい。ほら感じてごらん」
「彼?うん、いる。少し落ち着いてる」
わたしは、迎えに来てくれた家族の魂と一緒に中間生 (魂が肉体から出たあと、次の人生の準備をするために行くところ) へと向かった。
その途中で、セラピストからこの前世を振り返るように言われた。
絵に描いたような風景が浮かんできた。
小さな池でガチョウが泳いでいる、農家の庭が見える。
ピエールは、特に貧しいわけでもない、ごくふつうの農家に生まれたようだった。
白い頭巾をかぶった優しそうな母親、ちょっと気難しそうな父親、どちらの魂にも今生では出会っていない。
二十歳になったピエールは、修道院に入るため袋を背負って、家を出て行く。
神を求めて修道院に入る決心をしたのだが、実際に中に入ってみると、そこは退屈で欺瞞に満ちた世界だったと述懐する。
「さあ、行くべきところへ行ってごらん。どんどんどんどん行ってごらん」
わたしは、夕焼け空の中をふわりふわりと昇って行った。
すると、ふいに自分が広々とした神殿の床に立っていることに気づいた。
パルテノン神殿のような柱が林立する広い神殿の中を、わたしは進んで行った。
ハープの音色が聞こえてきた。
「今の人生ね、ああいう人生を生きた目的は何だったの。何をしようと思って、ああいう人生を生きたの」
「魂を高めるため」
「魂を高めたいと思ったんだ。その目的は達成できたかい」
「もっと人を救えばよかった。若い修道士も救いたかった」
「でも、もうピエールの人生終わったよ。今の人生の目的は何なのだろう。今、何を一番したい」
「小説を書きたい」
「書いてごらん」
「書いてもいいの」
「いいよ。小説書きなさい」
「自分の楽しみも追求していいの」
「わたしの書いたものを読んで、誰か救われる?」
「救われるよ。あなたの書いたものを読んで、大勢の人を救ってごらん。一人でも何人でもいい。あなたの書いたもので救われる人ができるのであれば、書いてごらん。もっともっとそれを進めていってごらん。それがこの人生の目的だろう」
「そうなの。そうなのか」
「ちがうかな。この人生はピエールと同じことしないよね。やりたいことやって、人が幸せになれば一番、自分も幸せだね」
「そうしていいんだ」
「そうしていいんだよ。そうしてごらん」
「禁じられていると思ってた」
「どうして、誰が禁じるの」
「若い修道士を救うことができなかったから。彼が幸せにならないと、わたしは好きなことができない」
「前世に引きずられちゃいけないよ。今の人生、新しい人生、リセットしてるんだよ。そして、この人生には新たな課題、目的があるはずだよ。それをどんどん追求してやっていくんだよ」
「息子さんには息子さんの人生があり、目的があるんだ。彼は自分で自分の人生を切り開くんだ。自分の課題をやることが、この人生でやるべきことなんだよ。一番したいことをするんだよ。一番したいことをどんどんやっていくと、自分が幸せになるよ」
「幸せになってもいいの」
「幸せにならなくちゃいけなんだ。あなたが幸せになれば、まわりが幸せになるんだ。あなたが不幸だと周りも不幸だよ。好きなことをして、自分の人生を切り開くんだ。
それがあなたの努めだよ。できるかい。やるかい」
短い沈黙。
自分を束縛する思いから自らを解き放つことを、わたしはまだためらっていた。
「うん」
セラピストに促されて、ようやく喉の奥からこの一言が出てきた。
この瞬間、わたしの心を長い間縛りつけていた鎖が外れて地面に落ちた。
その重たい響きとともに、わたしは身も心もふわりと浮き上がったように感じた。
魂は、あなたが生まれる前に設定した目的を思い出させようと常に働きかけてくる
「じゃあね、今から三つ数えたら、あなたの目の前にあなたの守護霊が現れるよ。あなたをいつも守ってくれている魂が現れるよ」
「わたしを守ってくれてる魂?」
「あなたをずっと守ってくれている魂がいるんだよ。1、2、3。ほら、人間の形で現れてきた。見てごらん。守護霊の存在はどんな形になってる」
目を凝らすと、光のもやの中から人の姿が現れてきた。
波打つ長い白髪と髭、思慮深げな青い目が、白い眉毛の下からじっとこちらを見ている。
「真っ白な髪と髭のレオナルド・ダ・ビンチみたいな人、ピエールの晩年の形してる」
「うん、いいよ。そのおじいさんに名前訊いてごらん。名前教えてくださいって」
「名前を教えてください」
「名前がスッと返ってくるよ。何て名前だい」
「名前は分からない」
守護霊の姿形は、たった今まで見ていた前世の自分であるピエールにそっくりだった。
「でも、前世の自分が自分の守護霊になるなんてことがあるのだろうか」
しかし、セッションを受けたあと、ほどなくしてその疑問は解けた。
当時テレビで放映されていた「オーラの泉」の中で、江原さんがこのようなことを言っていたからだ。
「魂は雲のようなもので、この世界に生まれてくる際に、雲に含まれている性格や才能などを自分で選択してくる。だから、同時代に魂が二つに分かれて別々の人生を生きることも、前世の自分が今の自分の守護霊となることもできるのだ」
わたしの記憶では、江原さんはこのようなことをおっしゃっていたと思う。
わたしの記憶が正確かどうかは別として、そのとき、わたしは江原さんの言葉に深く納得した。
わたしの守護霊は、やはり前世の自分であるピエールだったのだ。
「あなたの守護霊はひとり?」
「もうひとり。光っていてよく見えないけど、マリア様みたいな人がいる」
セラピストにそう訊かれると、人の形をした光が見えた。
はっきりとした姿形にはなっていないが、光はマリア様に似ていた。
ピエールがキリスト像の前で懺悔していたときに「罪を償いなさい。人を救いなさい」と促してくれた光の存在と同じだった。
「そう。じゃあ、守護霊に何か訊いてごらん」
「あなたは、ずっとわたしについてくれてたんですか」
わたしは、白髪の老人である守護霊に訊いた。
「おまえが愛に目覚めたから、そのときについたんだよ。おまえは長い混迷の時代にいたね。苦しい時をくぐってきた。でも今、正しい方向に歩いている。待ってたんだよ」
「そうか、待っててくれたんだ」
「みんな、救われたくて待ってるんだよ。誰にでも愛を与えなさい。神はひとつ。神は愛。みんないろいろなことを言うけど、それは迷いなのだ。何も難しいことはない。宗教は愛なんだよ」
わたしは、次々と脳裏に浮かんでくる言葉を繰り出しながら、感動していた。
そうだ。単純なことなのだ。
宗教は愛なのだ。
宗教をめぐる派閥や戦争、それはすべて人間の心から生まれたものなのだ。
差別、貧困、暴力、殺人、戦争などと同じように、すべて人間の無知と我欲と恐怖がつくり出したものなのだ。
守護霊は、それを迷いと言っているのだ。
あの神様この神様と、神がそんなにたくさんいて対立しているわけではない。
対立しているのは人間なのだ。
宇宙を運行している神はただひとつ、愛そのものなのだ。
「守護霊さんから、何かアドバイスありますかって訊いてみて」
「彼は彼で歩いて行く。好きなことをやりなさい。自分を満足させなさい。純粋に自分の神とつながりなさい。神様は見守っている」
「じゃあ、あなたはやりたいことをやって、自分をもっと幸せにするべきなんだ。そして息子さんは自分で自分の道を行くべきなんだ。そう言ってるんだね」
「もっと人をゆるし、もっと人を愛しなさい。この人生を全うしなさい」
「じゃあ、今から三つ数えたら守護霊は消えるよ。でも消えても、いつもそばにいるから安心して。守護霊はいつもあなたの魂を守ってくれているよ。守護霊にありがとうって言ってごらん」
「ありがとうございます」
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前世療法ってこんな感じ / 17世紀、わたしはベルギーの修道士だった
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